「VIPRPG紅白」はニュー速VIP板内のRPGツクールスレッドで毎年開催されている、ツクール作品を持ち寄り、感想を付け合う事を目的とした企画です。
個人的に気になった作品をいくつかプレイしたので感想など。自分の趣味が以下のような感じなのでおおむねそれに沿ったラインナップになっているかと思います。
- システムに凝った作品が好き
- 戦闘大好き
- 身にかかる火の粉を払う程度の最低限のザコ戦をこなすとボス戦が苦戦しつつギリギリ勝てるくらいのバランスが好き
- 敵の行動パターンを把握して戦術立てたりするのが好き
- 一定レベル以下や目標日数以下といったクリア目標があると燃える(明示的に報酬があるものは勿論、「レベル上げせずにクリアできるように作られている」といった暗示的なものも含む)
なおVIPRPGのお約束として、ほとんどの場合アーカイブファイルに実行ファイルが入っていないので、同じツール(ほとんどの場合RPGツクール2000)で制作された別のRPGから「RPG_RT.exe」をコピーしてくる必要があります。
アイマス
- RPGツクール2000デフォルト戦闘+独自要素
- モードチェンジによる戦闘スタイルの変更。移動中に変更できる(戦闘中の変更はなし)
- 主人公(黒騎士)はアタッカータイプと盾タイプで切り替え。ステータスと使用スキルが変化
- ヒロインは(細かい設定は省略しますが)多重人格的な存在。モードによりステータスとスキルが変化、装備もそれぞれ個別。「装備種別によって使用スキルが変化」といったヒロインごとの特性もあり。容姿も変わり、実質的にはキャラクターチェンジ。全4タイプ、移動中ワンキーで即座に順次切り替えできる
- ボス残機制
- ボスを倒した時に画面左上の★マークが残っていればこれを減らして復活、ステータスや行動パターンが変化
- 端的に言えば「残りHPによるボスの行動パターン変化の視覚化」だが、今どの段階にあるのかわかりやすかったり、パターンの変わり目が明確であるため、これに応じた戦略が立てやすくなる(というか立てないと勝てない)
- 復活直後に大技を使って来るボスも居たりと、弾幕シューティングの体力ゲージの本数にも近い趣を感じたり
- モードチェンジによる戦闘スタイルの変更。移動中に変更できる(戦闘中の変更はなし)
- 戦闘に関する要素がシンプルに纏まっており、各種要素を組み込んだ戦術を立てやすい
- ダメージ計算が単純
- 攻撃力・魔力≒ダメージ
- スキル威力は基礎ダメージに対する%表示
- 防御力の概念なし(パッシブスキルやバフとしての物理・魔法ダメージ軽減は存在)
- 命中率・回避率の概念はなく攻撃は必中(スタンとかによる攻撃阻害の要素はあるよ、というかとても大事)
- アクティブスキルはおおむね1人1~2個(もしかしたらレベルアップで追加で何か覚えるかもしれませんが、未確認)
- 装備品はメイン(ステータス変化+一部追加アクティブスキル)、サブ(主にアクティブ・パッシブスキル)の2種類
- 状態異常は100%効くか、絶対に効かないかのどちらか
- デバフの効果時間は基本的に1ターン(そのターンの行動を何らかの形で阻害したり)または永続のどちらか
- バフの効果時間は基本的に永続
- 属性相性の概念なし(強いて言えば物理・魔法の2属性)
- ダメージ計算が単純
- シンボルエンカウントかつ逃走率100%、ボス戦での経験値入手なし。ザコ戦0回レベル1でボスに苦戦しつつギリギリ最後までクリアできるバランス
- ダンジョンはワンマップ、豊富な宝箱からさまざまな装備品や消費アイテムを回収しつつも(ザコ戦全スキップすれば)初見でも3~5分でボス到達
- マルチシナリオ、1周2時間弱くらい。……ただしボス戦で数時間行き詰まったりしなければ
- 渋いテキスト、渋いキャラクター
- 魔法具現化ネタだが、本作の世界観における設定がオープニングで自然に説明されており、かつキャラクター設定は独自のもの(そこまで詳しくないけど、多分)。前提知識は全く必要ない
- 全体的にクールで落ち着いた雰囲気(が、決してユーモアが無いわけではない)
- BGM選曲が全体的にお洒落
- ルート分岐後はシナリオ、シチュエーションに沿ったボス戦曲。アツかったりお洒落だったり
- シナリオによっては幻想的なマップも。BGMも含めとても綺麗
個人的に今回の紅白で一番ハマった作品。引き継ぎなしで5周、すべてレベル1でクリアしました。初回プレイで1、2回ザコ戦やった後、「あ、これもしかしてレベル1でもクリアできるようになってるゲームじゃね?」という感触を得たので以降1回もザコ戦やっていません。1周目クリアした時点で「持てる手段をすべて駆使して死闘を繰り広げ、ギリギリのギリギリで勝てるバランスになってる……!」という確信を得たので、以降は作者さんのバランス調整を信頼して楽しく苦しみました。めっちゃアツかった!
ボス残機制もとても楽しい仕組みでした。状態異常の耐性なども変わるので、段階ごとに違った戦術を立てる必要がありますが、これが「残機2になったから次はこう来る」と覚えやすいのがよいですね。特に残機0になった最終段階では流石に猛攻を仕掛けてくることが多く、これまで構築してきた戦術では通用しないと何度も負けて悟って、心折れそうになった時にふと「あ、こっち試してなかった!」と別解が浮かぶ、みたいなことが多かったです。
負けても即リトライ可能、さらにその際メニューを開いて装備変更できるので試行錯誤もしやすい。どのキャラクターも元々使えるスキルは少なく、これに一部装備品で覚えるスキルが加わりますが、装備枠もメインとサブの2つだけなので「このボスならこれとこれ使いたいけど、どっちかしかセットする余地がない……」という二者択一の状況が多発。取捨選択に悩むのも楽しかったです。
ダンジョンは序盤がフリー選択、ルート分岐後はシナリオごとに個別のダンジョンとボスという感じで、序盤の進め方によって多少揃う装備とか違ってくると思います。レベル1プレイだと、数ターンにかけて全員の行動内容をパズル的に組み立てていくような状況もありますが、1つの最適解に決め打ち、という感じでもなく、いくつか手はありそうだけど今の手持ちの装備だとこれかな?みたいなノリ。それで苦労しつつも完全に行き詰まることは無かったあたり、バランス調整の妙を感じました。装備品は店売りもありますが、ボス戦だけやっていると、終盤に最強装備を1個だけ買えるくらいのお金が入る感じ。この1つを選ぶのもまた悩ましかったりで……。
シナリオは分岐しても大筋は変わらないのかな、と思っていたのですがこれは勘違い。それぞれ展開もテイストも全く異なる、別々の話でした。ダンジョンもボスも別なので、短編だけど全部やると実は結構ボリュームのある作品。ルート分岐前の共通部分は慣れれば15分くらいで済ませられるので周回も全然苦ではありませんでしたが。
イベントシーンは2行のメッセージ枠の瞬間表示により、短めでキレのいい台詞の応酬で進む感じ。シナリオ分岐のあたりでやや長めのイベントがあったりしますが、全体的には控えめなボリューム。それでも1つ1つの台詞に力があって物語やキャラクターを十分に印象づけており、ややビターでアダルティな雰囲気も好みで、どのシナリオも楽しめました。
キャラクターも魅力的。主人公のダリルさん、クールで寡黙な仕事人、という印象でしたが(もちろんそれも一面ですが)、語るときは案外語る、情に厚い男でした。国を捨てた元騎士、訳あって地元に帰る。という感じで昔馴染みも出てきたりで、クールになりきれてない所とかも好き。メインルートラスト付近の台詞(「 故に◯◯だ。」)とかもう渋くて渋くて。腐れ縁的な友人の魔術師サモンさんも、お調子者っぽいけど筋の通った男という感じで好感を持ちました。
ヒロインもみんな可愛かったり格好良かったりですが、特にお気に入りはモード:サイドキックの子。オープニングでの「承知!」が格好良かったので個別ルートのラストもぐっと来ました。ダリルさんとヒロインの関係性も恋人、
他にも一部のマップは幻想的で歩くのが楽しかったり(多重スクロール的な演出なので静止画だとイマイチ伝わりませんが)、マップ名もちょっと小粋だったり。BGMもとても雰囲気にマッチしていました。
とまあ、作品自体は個人的に非の打ち所がないのですが、敢えて言うならこのゲームタイトル……。何らかの意図があるのだとは思いますが、他の人の感想とか探そうにも探しにくい、自分で言及するときも「VIPRPG紅白2015の方」とか言及しないと誤解を生みそうなど、ちょっと悩ましい感じではあります。
……いくらでも語り続けられそうですがきりがないのでこの辺で。最後に一部ヒロイン個別ルートごとのバトルの印象など。
- モード:サイドキック
個別ルートでの加入キャラクターも含めHP回復役がおらず、ノーガード殴り合いに。ノーザコ戦プレイだと回復アイテムを買う余裕もなく、ダンジョンで拾ったアイテムが頼り。ルート分岐後の1つ目のボスでちょっと使い過ぎたかなーと思ったらやっぱりその後に詰んだのでセーブデータ巻き戻しました。やばい。楽しい。MPを消費してメイン装備品をユニット化する固有特性の使いこなしも面白かったです。(ユニットは戦闘不能時や任意で帰還、その際MPは還元される。再ユニット化でHPもMPも全回復するので強力だが、帰還→再ユニット化で2ターンかかり隙ができるのでタイミングの見極めが重要。) - モード:サザン・ベル
こっちは逆にヒロインが回復役なので余裕っしょ~、と思ったらもちろんそんなはずはなく、それ以上の猛攻が来る。回復魔法による持久戦、というと一見面倒でつまらなさそうだけど、仲間のHPや状態異常を回復しつつ、隙を見て自己MP回復スキルを使う回復戦略はそれはそれで面白く、こういうのもあるのか、と思いました。固有特性「歌姫」により、他の行動(通常攻撃や防御など)を挟まずスキルを使い続けることで魔法の威力が上がったり必要MPが下がっていくのはシステムとしても面白いし、戦場で歌い、踊り続けるというイメージもキャラクターに合っていて綺麗。情景が浮かぶようでした。最強魔法的な位置付けのスキル、そのままでは消費MPが最大MPよりも上で使えないけど強化段階上げると使用可能になる、というのもなかなかアツかったです。 - モード:トリックスター
中盤で手に入る装備で使用可能になる、敵の残機を一撃で削れるスキル「介錯」が面白い。勿論これで全部の残機は潰せないし、これが使えるようになる装備品は攻撃力自体は低いというバランス。ヒロインは装備品により物理攻撃タイプと魔法タイプ(回復魔法持ち)が切り替わり、ダリルさんのモードと合わせてパーティ編成の幅が広い。ルート分岐後の加入キャラクターを含め全員で速攻を仕掛けるか、バランスよく行くか、ボスに応じた編成を考えるのも面白かったです。1ターンで倒し切って残機減らさないと無限に回復するボスも居たり。
金リカ2
- Ruina(窓の杜の紹介記事)オマージュゲー
- Ruinaが面白いからシステムがほぼまんまの本作も面白い……と言ってしまうと身も蓋もないのですが、実際問題として原作プレイ者でも新鮮に楽しめるだけのネタ(イベント)を盛り込みつつ、バランス取れてるのは貴重なことなのではないかと思ったり?
- 何はともあれ、このシステムの新作がプレイできることに感謝
- (中盤以降、実質的にダンジョン内でいつでもセーブできるようになってしまうのが縛りを意識すると若干アレでしたが、まあ意図的にプレイ感をライトにしているのかもしれないですし、こだわるなら自主的に封じ手にすればいいのかなと)
- ストーリーは流行りのクトゥルー系かな?→Ruinaオマージュ強い感じかな?と来て、3つめのダンジョンくらいで「あ、あれ系か」と把握。個人的に好きな系統。ネタバレってほどでもないけど一応明言は避けます。↓に掲載したスクリーンショット見ればバレバレという気もしますが
- 魔法具現化ネタですが、「魔法を具現化(擬人化)したキャラクター達を各作品の作者が定番設定を使ったり、あるいは独自に解釈したりして登場させるシェアードワールドとスターシステムの中間くらいの感じ」程度のニュアンスを把握(これもあくまで私の解釈ですが)していれば十分かなと思います
- 本家パロディもそこそこ
- ライトで賑やかな雰囲気だけど、アツい所は結構アツい
- ボス戦曲もアツい
- 思ったより結構ボリュームありました。自分(文字読むの遅い、考え込みがち)が8時間くらいだったので普通の人なら5~6時間?
正式名称は「金髪リカバーちゃんがダンジョンに潜るゲーム2 ~はい説の物語~」。前作プレイしていませんが、「続編というよりはリメイク作品なので、前作を遊ばなくても一切支障はありません」とのこと。
ジャンル名の『だって、原作者も「似たようなゲームが何本も出たらいいなー」って言ってるし……』ってどこでのご発言かなーと思ったら、赤松弥太郎さんによるインタビュー企画フリーゲーム あの人に聞きたい ! でのご発言のようですね。
さておき、ストーリーは基本的には軽めのノリですが、中盤以降のボスはそれぞれの業や矜持をもって主人公達と相対したりと、結構アツい展開も。TTEXP100%と既定日数以内のチェックポイント通過を意識し、戦闘を最小限にして進めるとボス戦はなかなかの激戦で、ターン開始時の残りHPバーの表示演出やアツいBGM、ボス戦開始時の曲名表示演出などもいい感じでした。作中を通して一番苦戦したボス戦(強力な炎攻撃を仕掛けてくる)、回避率上昇のバフがかかったキャラ一人が生き残って残りHP20、次食らったらゲームオーバーという攻撃を回避してボスに止めを刺した時はむちゃくちゃ興奮した。
さまざまな課題に対してプレイヤーが考えて工夫して、自分なりのやり方で時には失敗しつつ進めていくのが楽しいゲームですが、それが終盤の主人公の口上に繋るのもアツかったです。楽しかった!
メイジの転生録
- ノンフィールド
- プレイアビリティの塊
- 敵を倒し続けると「その敵に対する経験値」が溜まる。一定数溜まるとその敵を圧倒できるスキルを取得。飽きる前にその戦闘は楽勝できるようになる+「貴様などもう敵ではない」という演出も兼ねる
- 装備やコマンド選択など、プレイヤーが管理するキャラクターは主人公1人。それでいて「仲間と一緒に戦っている」確かな感覚を得られる(戦闘中に支援行動)
- SEにも気を配られた軽快なUI
- 「50歩」の妙(詳細後述)
- 紹介ページ見ると章が多い、長編?→あっという間に章が進む異様なまでのテンポの良さ。プレイ時間は5~6時間くらい?
- 最低限の戦闘(途中で引き返したりせず、サブダンジョンも1周のみ)でクリアできるサクサクバランス。裏ボスは程々に苦戦するくらいの丁度良さ
- そもそも個人的な印象としては本作に「ザコ戦」は存在しない。すべてイベント戦、みたいな
- 道中で遭遇する敵も皆異様にキャラが立っている
- 道中の戦闘も段階的に敵の数などがステップアップし、それに応じてBGMも同系統で変わるなどイベント的な演出
- 戦闘バランスも1人パーティを前提によく練られていると思います
- MP自動回復を戦術に組み込むのが楽しい
- 回復スキルに別の効果が付属していて使い所を考える余地がある
- 装備と使用スキルの試行錯誤が楽しい
- ただHP回復が精神力アップを兼ねる上に、終盤手に入る装備的にも最終的には精神力依存スキルしか択がない感はちょっとあるかなあ
- 尖りまくってて格好いいキャラクター
- 独特で格好いい台詞回しの数々
- ダイナミックで格好いいイラスト
- お洒落で格好いいBGM選曲
- 機能的で格好いい探索拠点のデザイン
- 格好いい!!
- リズムとテンションの力で誤字まで個性にしてしまう強さ
- 細部まで独自の世界観で染め上げる作り込み
- オートモードの名前が「無為無策」。なにそれ格好いい……
- ノーダメージ時の表現が『◯◯ 「何かしたか?」』
- 24億年を超えて運命が邂逅する壮大でアツいシナリオ
- 過去作(前世)絡みも含め、終盤は結構涙ぐんでしまう展開も
- そうやって浸ってる時に大事な所のとんでもない誤字で笑わせるのずるい……
- 「2ヶ月後」(黒背景特大白文字スクロール)って転生繋がりで「聖剣使いの
禁呪詠唱 」オマージュかな?と思っていましたが、作者さんが影響を受けた作品として挙げられていてやはり……!と思ったり。ダブルフェイト(二重前世)の発想のヒントにもなっているのかも?
何というか、こうして言葉で説明できる面の外側に大きな魅力がある作品なのがアレですが。ただやはりそういう所にハマる下地としての、圧倒的なプレイアビリティの高さもわたくし的には見逃せない感じです。ゲームバランスも個人的にちょうどよく、最低限の戦闘回数で裏ボスまでクリア(レベルは13)。裏ダンジョンのボスなどはなかなか歯応えのあるバトルを楽しめました。
特に良いなあと思ったのがダンジョンの歩き方。ノンフィールドで基本的に深度50、「何かあるまで進む」で基本的に5歩ずつ進行。つまり実質的には移動は約10回なのですが、プレイヤーの手間は増やさずに、結構ボリュームのあるダンジョンをサクサク進行している雰囲気が演出されてるなあと感じました。進んでいる時のザッツザッツというSEも心地よい。
イラストは上手いと思います。いや上手さの定義にもよるのでしょうけど、こと「ゲームにおけるシチュエーション・空間演出としてのイラスト」として見た場合、ダイナミックな構図(特に戦闘画面)と容易に真似できないデザインによって「独自の世界観に引きずり込む」「一目みればこのゲームのイラストとわかる」「デッサンがどうとかいうレベルを超越することでそういう勝負に持ち込まない」という感じ。うーん、上手いというとやっぱり語弊があるのかな。敢えて言うなら「強い」でしょうか。強いイラスト。まあそれはさておき、千鶴さんめっちゃ可愛いよね格好いいよね。
とまあ、本作に限って言えば掛け値なしに傑作だと思っているのですが、悩ましいのは過去作との関係。この辺は人それぞれだと思いますのであくまで自分の中での話ですが、個人的には「メイジの悲劇嘆」「メイジの因果録」という過去2作あってこそのストーリーだと思います。「転生録をプレイして面白かったら過去作もいかが」というレベルではなく、少なくとも終盤に入る前にはプレイしておきたい。24億年がかりのアツい伏線回収はやはり順番にやってこそだと思いますので……。
序盤プレイしてピンと来たら一旦中断して過去作やりましょう、ってあたりが落とし所かなあ。(繰り返しますが自分の中での話……つまり「私の趣味を熟知している私が、過去の私にもし勧めるならば」という前提における話です。)
……で、過去2作ともにシナリオの独自性や勢いは既に片鱗を見せており十二分に面白いのですが、自分のように雑魚戦を極力避けてしまうタイプだと、自力でクリアするのがちょっと厳しかったです。ただ、有り難いのはいずれも、「ザコ戦で地道にレベル上げしていないとここで行き詰まる」という所について、レベル上げ済みのセーブデータを同梱という公式チートが用意されている点でしょうか。手段は大きく異なりますが、ストレスのないプレイを提供したい、という作者さんのお考えは昔から一貫しているのかなあと思ったりしました。
ちなみに「メイジの悲劇嘆」に関しては、「王道RPGのミニマム化作品」として完成度が高い(完成度の定義にもよりますが云々以下略)と思っています。最初の塔では立体迷路を制覇したような気持ちになれたり(実際は全く迷う余地はない)、RPGのお約束である「石像を動かして道を作る倉庫番ゲームっぽいフロア」があったり(実際は別に何もしなくていい)、「何となくイベントこなした気持ちになれる」雰囲気作りというか。船を取ったあとにほんのり自由度があったり、小さな世界だけど、ちゃんと世界を旅した感触を得られて楽しかったです。
ニートスライムの魔王軍入隊試験(短編集「無限の高さを持つ壁の前で」に収録)
- RPGツクール2000デフォルト戦闘+カードゲーム風スキルシステム
- あらかじめセットした10個のスキルから戦闘開始時に3つがランダム選出、ターン経過時に一定確率で追加選出
- アクティブスキルのほかパッシブスキル、オート(自動発動)スキルも。パッシブ、オートはセットするだけで効果がある。逆に言えば戦闘中に選出されても意味がなく、その分アクティブスキルの選出機会が減るのでバランスを考える必要がある
- 特にオートスキルは強力な分、1つでスキル枠を複数個分占有する
- アクティブスキルは同じものを2つセットして選出機会を上げることができる
- スライム+ゴブリンの2人パーティ(スライムのスキルがカードゲーム風、ゴブリンの方はスキル固定)。行動順は味方先攻→敵グループ→味方後攻で固定。先攻と後攻の連携スキルなどがある
- 戦闘開始時のMPは4固定。ターンごとに4増える。最大20
- 敵の残りHPは見えないが最大HPはわかる(名前に書いてある)
- 状態異常は必ず効く。むろん、それで封殺できるほど甘くないように作られているし、敵が使う場合も同様ということで……
- ステージクリア型、戦闘は固定配置のみ
- スライムのレベルは経験値を消費して任意で上げる(ゴブリンはゲーム進行により自動で上がる)。指定レベル以下でのステージクリアでボーナスあり
- ステージ中に1回、キャンプで全回復ができる。ノーキャンプボーナスあり
- プレイ時間は2時間くらい
窓の杜で紹介記事を書いたのでこちらもご参考までに。というか書きたいことはだいたい記事に書いちゃったかな。敵の行動パターンを把握し、ランダム要素も織り込んだ戦術を立てて効率のよい戦闘を追求、低レベルクリア&ノーキャンプという目標を達成するのが楽しかったです。難易度は一部考え込むのもあったけど(敵に全体回復、復活役が居るとキツい)全体的にはほどほどかな。
あ、そうだ。あっちに書くには個人的すぎると思って省いたのがBGMの話。ボス戦曲がRPGツクール2000のデフォルト素材曲である「フィールド4」や「安らぎ3」のアレンジでやたらアツく、聞き慣れた曲がこうなるのか~、という新鮮さもあって良かったです。とくにあの「安らぎ3」をベースにラスボス戦っぽいテンションのアツいアレンジというのが面白く。
ちんすこうクエスト-暗殺者やみっち-
- スロットバトル
- リールの絵柄は剣、盾、魔法の3種類。ターンごとに指定された絵柄を指定された数だけ揃えることで攻撃が成立、失敗すると逆に攻撃を受ける
- 指定される数が多いほど大ダメージ。また、3つ揃えた場合は指定された絵柄でなくても攻撃成立
- リールの速度は3段階、遅いほど失敗した時のダメージが大きい
- ガードが可能。攻撃のチャンスを放棄する代わりにダメージ低減。さらに次ターンのリールを遅くできる。ダメージ軽減の度合いはリールを止めた数が少ないほど高く、リールを1つも止めないうちにガードするとどんな敵でも1ダメージで済む(=途中で「揃いそうにないからガードしよ」となるより、最初から諦めた方が効果が高い)。ガードとても大事
- 攻撃成立・不成立どちらでも(ガード以外なら)必殺ゲージが溜まり、3つ溜めるとリールを2つ、5つ溜めると3つ全部を強制的に揃えられる必殺技を任意のタイミングで発動できる
- 強化ポイントを使って剣、盾、魔法それぞれのダメージボーナスや回復ポーション(危険なとき自動で使ってくれる)の数を増やすなどキャラクター強化要素あり
- ダメージボーナスや必殺ゲージが3つ溜まった状態で戦闘開始といった効果をもつアクセサリあり(お金で購入、1つだけ装備可能)
- スロットゲーではあるが、こうしたキャラクターカスタマイズやガード、必殺技といった要素を駆使することで、目押しができなくても戦術でカバーできる作り
- ストーリーの進行に応じて固定戦闘。RPGというかADV+戦闘的な?
- マルチシナリオ、1周30~40分くらい
- (いい意味で)キザな台詞回し
- 主要キャラクターは魔法具現化だが、「魔法と融合させられ生体兵器にされてしまった人間」という独自設定が作中で行われている
- やみっち(ダークネスⅠ)をひたすら格好良くスタイリッシュに描くシナリオ
- 宿命の対決と、家族の物語……みたいな。不覚にもラストちょっと泣いた
- オマケシナリオは打って変わってギャグだったりガチ百合だったり
- (テキストはちょっと誤字というか漢字の使い方の間違いなども見受けられれますが、まあ気にしない方向で)
スロットゲー……というか、場と自分の状況を見てスロット勝負に出るかどうかを判断するメタ・スロットゲー、みたいな? わたくし、動体視力・反射神経皆無につき一番遅いリールを6~7割の確実性で揃えるのがやっとでしたが、カスタマイズで一点極振りし、ひたすらガードしつつ勝機を窺う戦術で何とかクリアできました。もちろん、目押しできればもっと楽に勝てるのでしょうけど(1回クリアで上位難易度解放、そっちは流石に無理そう……)。
それでも、追い詰められた時や「ここは流石にリスク取っても攻めるべきだろ」みたいな時は目押し勝負(というか自分の場合ほぼ運勝負)に出ることもあり、これがうまく決まった時の爽快感はなかなかのものでした。
ストーリーは生体兵器にさせられ、保護されて幸せな時期も過ごすが「自分にはこれしか生き方がない」的に暗殺者となったやみっちが、殺人兵器を止めるため敵国に乗り込む……というシリアスなもの。立ちはだかる敵とやり取りなども、ひたすらにスタイリッシュ。
たとえば月をバックにしたブライアンとの対決、キザなブライアンが定番のキャラ付けとのギャップもあって面白かったです。ここ、戦闘への入り方も戦闘曲自体もめっちゃ格好良かった。ワイルドアームズっぽい曲だなーと思ったら実際、ワイルドアームズを意識した曲だったみたいですね。ちなみにWingless Seraphさんの「マカロニウェスタン・バトル!~荒野の決闘~」です。
Cold_of_Pasta
- サイドビュー1vs1バトル
- 2つまで装備できる武器が持つスキルと、色々ある中からたくさんセットできる魔法で戦う
- ほぼバトルオンリーゲー。固定配置の敵を倒してその先にある宝箱で武器や魔法ゲット、さらなる強敵に挑む
- 攻撃魔法を使う意味があまりなかったり(MP的なものを消費する割に、武器攻撃に対するアドバンテージが低い)似たような効果のスキルがあったり、バランスはやや詰め切れてない感じ
- 作者さんのコメントに「エターなったので代理」「戦闘バランスが悪い?〆切が悪いんや…」との記載あり
- 戦闘は数戦、プレイ時間は30分くらい
……という感じでやや未完成感ありますが、敵のパターンを把握して対策を立てる、気軽に遊べるスキルゲーとして十分楽しませていただきました。もろもろリファインした完全版みたいのがもし今後出るなら、ぜひプレイしたいです。
体験版
フレイム冒険記
- 2Dダンジョン探索型長編RPGの体験版
- コンフィグなども含め、とても丁寧に作られている印象
- パーティメンバーがいっぱい増えていくタイプ……だと思います
- 主人公のフレイムⅢは「守護霊」を切り替えて戦闘スタイルを変更可能
- 初期加入キャラのゴス子は敵から技・能力・耐性を吸収できる
- 吸収できる能力等が2つある敵(ボス含む)も居るが、2つ目は吸収技でトドメを刺す必要があるのがちょっとだけ面倒でした。とくにボス戦ではうっかり倒しちゃうとやり直し……
- ゴス子は敵の能力見る技を持っているので一応残りHPの確認は可能だが1ターン消費する
- 2つ目の能力等を持っているかは1回目の吸収時にわかるので、無闇に試行する必要がないのは有り難い
- 他にも2回行動(普通に敵・味方が1ターン行動した後に再度コマンド入力できる)などキャラクターごとの特徴がはっきりしている
- RPGツクール2000のデフォ戦ベースのターン制コマンド選択型だが、回復スキルや一部攻撃スキルが「発動時に対象を選ぶ」方式なのは使い勝手が良さそう
- 戦闘終了後にHP全回復、戦闘不能でも経験値が入る。MPは回復しないがフィールドのそこら中に落ちている星を拾って容易に回復できる
- シンボルエンカウント、自分より弱い敵は吹き飛ばすこともできる
- ボス戦は任意でハードモード選択可能。ボスが強化され、報酬(お金、アイテム)が豪華になる。ゴス子が吸収できるものも異なる
- 開くのに一定レベル以上が必要な宝箱とそうでない宝箱が並んでいて、「片方を取ってからマップを移動すると両方消えてしまう」という場面がある。……説明がややこしいですが、要するに「レベルの低いうちに片方だけ取ってもう片方は諦める」か「レベルが上がるまで我慢して上がってから両方取る」かの二者択一
体験版ということで、ひとまず2体目のボスまでプレイ。「エンカウントはなるべく避け、回避不能あるいはうっかり触れてしまった時だけ戦う」といういつものスタイルで進めて2体ともハードモードで倒せたので、こんな感じのバランスで続くなら完成版もプレイしたいなーと思います。
ボス戦ハードモードやレベル制限宝箱などは、チャレンジや検討のしがいがある一方で、「そこで手に入るものがオンリーワンだとしたら」ややシビアだなと感じる面も。未確認ですが、流石に取り逃したら二度と入手機会がないってことはないのかな……?ボス戦については感想掲示板を見たら、再戦の機会は設けられるようです(既に実装済みかどうかは未確認)。まあ何にせよ、個人的には報酬が良い方を選ばないという選択肢はないのですが。
見るゲ(イベントシーンのみで構成された作品)
見るゲは普段あんまりプレイしないのですが、今回とくに気になったものがあったのでやってみました。
エンディングノート
- 時代も登場人物も異なる掌編6編、短編6編、中編2編の集合。バラバラに見えた物語が少しずつリンクしつつ終盤の大きな流れに集束していくみたいな
- 主人公(案内人)が紐解いた書物の中の物語において、ある老人が懐古する少年時代の物語、の中で少年が語り聞かされるかつての勇者や魔王の物語……みたいなメタ構造(すき)
- 兄と妹、夫と妻と娘、母と子……家族の物語
- 圧政に立ち向かう教師と子供達の物語、かつて世界を守ろうとした勇者達の物語
- シリアスありギャグあり
- 瞬時の場面転換などキレのいい構成
- 「もしもの力」vs「PARの力(改造コード)」の最強対決、アツい
- 中盤以降は、ある人物が生涯をかけた「血を流さない戦い」をさまざまな角度から直接的、間接的に描く面も。アツい
- 短編では「ふたりだけのエンパイア」が特に好き。ダーブラさん渋すぎでしょう……
- すべての生き物は「循環」するという設定と、自然発生の魔法具現化は長寿という設定を活かした作り(この人は2代目?本人?みたいな)
- こうして大小さまざまな出来事の積み重なりで紡がれた年代記の最終章を飾るのは……フードファイト!え?
- 作者さんのテストプレイで5時間とのこと。自分はじっくり読んだこともあり8時間くらい……かな
- セーブポイントが数十分~1時間くらいおき、かつ次がどのくらい先なのか読めないので寝る前にちょこっとずつ、みたいな進め方ができないのは悩ましい(3日かかりました)。とはいえあまり頻繁にセーブ画面で中断入ると興醒めだし見るゲの宿命的な悩ましさですね……
という感じで、とくに中盤あたりから結構熱中して読んでいたのですが(キオ……!)、フードファイト編に入ったあたりで若干面くらいました。まあフードファイトといっても「古流食闘術」とか出てくるガチバトルではあるのですが、それはそれでどうも何かのパロティっぽい感じで(プレイ後に感想掲示板みて知りましたが元ネタは刃牙みたいですね)、面白くないことはないんですがやや置いてけぼり感も。
でもラストにむかって、「これまでの伏線がたった1つの台詞で見事に集束する瞬間」にはっとさせられたり、ここまで読んできたからこその「ただひとたびの邂逅」に胸が滾ったりで、やっぱり最後まで読んで良かったなーと思います。
(むちゃくちゃ余談ですが、これ、エンディング後にゲームが自動終了したら演出としては最高だったと思うのですが、そもそもRPGツクール2000だと無理なんでしたっけ。)
自分は軽く触りをプレイしたくらいだけどちょっと面白そうだなと思った作品
せっかくなのでメモっておきます。
てけりり☆ばすた~ず
クゥトゥルーの神話生物と戦うゲーム。TPRG「クトゥルフの呼び声(Call of Cthulhu)」の戦闘ルールを再現している、みたいです(あんまり詳しくない)。
誰がために搭は在る
キャラクターが最初からいっぱい居て自由に編成して塔を登っていくハクスラやり込み系(たぶん)。戦闘はATB(ゲージ溜まると時間止まるタイプ)。戦闘画面が格好いい。
絶対パコれる漢字トレーニング
探索パートで漢字を集めて、分解・結合で熟語を作り出し、これを使ってバトル。漢字は部首まで分解して別の漢字を作ることも可能。発想も面白いですが、膨大な組み合わせのデータを用意する作り込みも凄いなあと思いました。
ちんすこうクエスト -暗殺者やみっち-の地獄モードをクリアすると やみっちが暗殺者になった
きっかけの話が見れたりしますよ
どうしてもクリアできないならおまけシナリオを動画にしたものが上がってるのでそれを見るといいかも ある意味「やみっちの愛」を買って見れるおまけシナリオがこのゲームの真のEDと言えるかも
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27985074
コメントありがとうございます。「やみっちの愛」は気になっていたのですが自分の腕だと通常モードがギリギリという感じで、諦めていました。
動画、教えていただきありがとうございます。